2006年06月16日

「ぶつかりあい」についていくには見る側の覚悟も問われる「クラッシュ」

「天使の街」ロサンゼルス。深夜のハイウェイで黒人刑事グラハム(ドン・チードル)と、同僚でスペイン系の恋人リア(ジェニファー・エスポジト)は交通事故に巻き込まれる。リアは中国人の中年女性と激しい口論を始め、グラハムは偶然事故現場の近くで発見された黒人男性の死体の捜査に引きつけられていた。この交通事故と殺人事件に少しずつかかわった人々のそれぞれの「衝突」=crashが、予想もしない角度で交錯し、連鎖していく……。

クラッシュ.jpg

今年のアカデミー作品賞・脚本賞受賞作。というわけで劇場では見逃したけど、もし観るとあなたが決めているば、
まず基本的にネタバレ禁止の映画なので、これから私の書くことは勿論、
前情報はいっさい入れないで見に行くのがいい映画だと思います。
ただし、タイトルにも書いたように、必ず「覚悟」だけは決めて見に行くように。そのくらいこの映画、辛口の映画です。

と前置きしてから。観てからだいぶ日にちが経った割には、今回は私の感覚には合わない映画だったので
厳しいことを書いてしまいます。だからこれから観ようと思われている方は、だから本当にどうか、読まないで頂きたいな・・・。
あまり偏った印象を持って観始めるとよくないですので。

・・・と2回警告したので、これ以降読んだ方であとで文句言っても責任とりませんのであしからず。・・・テーマが人種的問題を含むため、以前にも書いたんですけど、とにかく見始めた最初の20分くらいは、気分悪くて悪くてしょうがなかったです。
人物の絡み合い方や構成、予告で誰もが「その後はどうなるんだexclamation&question」と思った(と思う)「女の子が撃たれるシーン」などの演出は
それは確かにレベル高いなと思うのだけど、でもこの映画でアカデミー賞もらえるなら、もっと明るくハッピーで
同じくらい手の込んだ脚本・構成の「ラブ・アクチュアリー」に賞あげてくれよ!!!と、
「ラブ・アクチュアリー」全面支援部隊・ことしつこい私は蒸し返してしまう^_^;
(「ラブ〜」はノミネートすらなかったのにさー、公開時期が早かったからって大枚はたいてDVD配りまくり作戦に出た
「クラッシュ」が賞とってしまうと、アカデミー賞の会員の権力日和見主義を感じてしまうなー、、、)
とにかくこんな暗黒な映画だと思わなかった・・・。というのが最初の感想。
それが見ているうちにだんだん緩和されてはきました。
こいつすっげぇ悪いやつ!と思っていた人が、実は苦労人だったり、よい面もあったり。
成功者に見える人も、実はすごく差別に苦しんでいたり。
絶対的な善も絶対的な悪もない、人間はその両方を併せ持った存在で、その人たちが
ぶつかり合う=「Crashする」ことによって、思わぬ展開となっていく・・・。
運良く救われるもの、たった一つの過ちで一生背負う傷を負うもの、
それは見る側が誰に感情移入するかによって感想が変わるものだと思いました。
ちなみに私はドン・チードルに入れ込んで見ていたので、最後本当に真っ暗になってしまったたらーっ(汗)
あんなに頑張ってる彼が何も報われないなんて、救いがなさすぎる。。。

私は「天使の街」(=LA)には行ったことはありませんが、アメリカにちょびっとだけいた者として、
そりゃまあいわゆる差別というものも経験しています。 
ただしど田舎だったから、多分都会的な差別とはまた違う差別なんだと思うんだけど。
そんな私でも、この映画の描き方には、かなり抵抗がありました。
アメリカは、あんな底知れぬ憎悪が、いつも澱のように澱んでいる、
それが何かのきっかけで噴出するような世界なんだろうか?
たとえそうだとしても、それを描き出すことで、また新たな「クラッシュ」を産んでいくだけなのではないだろうか?
勿論日本にも差別はあります。皆言わないだけ、隠してるだけ。 
でも厳然とそれは存在し、地下やネットに潜っても、なくなることはない。
ジャーナリストや作家は、時にはその「闇」を表に出すことも必要。解決する為には、一度それを露にしなくてはならないから。
描くなとは言わない。むしろ描いているからこそいい映画もある。
だけど、どうしてかこの映画の描き方は私の感性にフィットしない。それが何なのか、こうして書いている現時点でも私には分からない。
ドン・チードルに入れ込んでいた私の見方のせいもあるんだろうけど、どうしても生理的にあわなかった。
映画的構成力はさておき、内容を、私はどうしても受け入れる事ができなかった。それが何なのか、今後も考え続けなくてはならないのだけど・・・。
じゃあアカデミー賞、「ブロークバック」にあげてもよかった?と聞かれると、うーん、今年のアカデミーって作品賞小粒だったのかな?って
改めて考えてしまいました。 去年の「ミリオンダラーベイビー」が、小粒でもすさまじく重たく残るのに比べると、
この映画は重くなく、ただ暗い面を見せて考えさせてるだけのような気もしないでもなかったです。
とにかく「覚悟の出来てる方だけ」見た方がいい映画だと思います。 
複雑な脚本の映画が好きな人にはオススメできます。(あの連鎖は、「先読みのこたえ」でも予想できなかった、、、)
posted by こたえ at 00:00| Comment(4) | TrackBack(5) | Cinema | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も この映画を絶賛している方には申し訳ないけど 凄く全体的に嫌悪感感じてしまい 私の感性にどうにもこうにも全く合わなかった映画。ドラマを感じなかったったって言うか。。誰一人にも感情移入出来なかったって言うか。。もう忘れかけてますが そうねーあの被害を受けて、ドアの鍵を直すべきだったつーとこなんかは かなりアメリカでアリっぽいエピだわと記憶してる位かな。
で 2006年の作品賞は 未だに ミュンヘンかナイロビの蜂と勝手に位置付けてる私です。ジーコの采配でないけど 納得いかないっすよね〜〜?クラッシュとブローク。。でもめたというのは。。

ナイロビの蜂は きっと こたえさんにも『くる映画』だと思いますよ〜〜
私なんか 見終わって えええええええ?てやるせなくなって 後でジワジワ もうみんなのレビューが気になって気になって。。それで映画の予告を見直して 思い出して泣いてた位ですからねっ(爆)見終わった瞬間は ジーコの采配(しつこいな。。爆)でないですけど 納得いかないんですっ。何セ、あの映画は 撮りと展開と英語が早いのと 社会派ラブサスペンスって なんかゴチャゴチャし過ぎて困惑するんで 私には非常〜〜に難解だったんですよ。
で 今にして思えばレイチェルワイズの演技って ほぼ演技と言うより素なのよね。で 撮り方(やはり ある意味凄いよ この監督。。)のストーリー上の役柄に依るんだよね〜〜凄く美化されているわけ。。ドキュメント風なので 目が疲れるんだけど残像として凄く訴えてくるのよね。
あと、やはりレイフ ファインズ凄過ぎます。 あのナイーブな演技に感激ですよっ。(レイフには一目置いてます)(タイプで無いけど 彼の出る映画は大作が多いですよね)(最新のハリポタ映画でも 凄い特殊メイクでしたよ)
Posted by ミュア at 2006年06月16日 08:39
☆ミュアさま☆
ジーコの采配(爆笑)!! わはは〜(~o~)
そうだ!!!!作品賞は「ミュンヘン」でよかった〜〜!←危うく忘れそうになってました(汗)
「ブロークバック」とこれとだけが、やたら注目されてたんで、両方とも見に行ったんですけど、ううーん、うーーんん、、、、、という感じでした。
「クラッシュ」で感動したのは「天使のマント」のところくらいかなあ。。。
純粋な女の子の気持ちが報われたのがうれしかったので。。。あとはちょっと私にはヘビーすぎました。
「ナイロビの蜂」、ああ、どうして長崎では2週間?!(涙)
日本では予告が思いっきり「シェルタリングスカイ」とか「イングリッシュ・ペイシェント」っぽい、第三世界ラブストーリー系に作ってあったので、見に行って社会派だったからびっくりした、なんて感想もありましたし、日本では予告の作り方失敗してるかもしれないです。
そうか、レイチェル、素なんですか〜。それにしてもいつも私の好みの人と共演してて羨ましいっ♪(私はレイフ・ファインズもジュード・ロウも好きなもんだから、、、)
メイレレスがレイチェル・ワイズをぼんやりと手ぶれ系の映像で撮ったのは、M山さんも書いてましたけど、彼女はもう思い出の中にしか住んでいない、この世ならぬものだから、その美しさだけがジャスティンの中に残っている、その美しさだけを撮ったから、なんでしょうね。。。 ああ書いてたらどんどん見たくなってきた(笑)。

ジーコの采配といえば、いよいよ今夜ですわ〜〜!!
なんと!あのアメリカがイタリアと分けてしまった今!! おうちでの応援がかなりつらいかと思いますが、一緒にがんばって気をドイツに送りましょう〜〜!!p(^ ^)q
Posted by こたえ at 2006年06月18日 15:41
こたえさんコメント遅くてすみません。
自分はこの映画結構よかったと思った
派なんですけど、生理的に合わないって
当然なんで上のレビューも興味深く
拝見させていただきました。
最初に観たときに端的に「面白い!」
って思った作品だったんですけど、
確かにネガティヴな内容ではありますよ
ね。
ただこの作品の闇は自分には許容範囲でした。
自分はアカデミー賞って別にどうでも
いいと思ってるほうなんですけど(笑)
以前の「アメリカンビューティ」
なんてそういえば観た時に腹立たしさを
覚えるくらい合わない映画でしたね〜^^
今回「明日への記憶」は自分はダメだ
ったので、なんだか意見合わないです
ね(笑)
Posted by kazupon at 2006年06月20日 19:42
☆kazuponさま☆
いやいや、全部感じ方が同じだったら同じ人になっちゃいます(^^♪
違うからこそ、ここまでたくさんの方がBlogを書いたりするんじゃないかなー。ので、これに懲りずよろしくお願いします。
そもそも私が多少感覚ずれているし(^^ゞ
私のいた「アメリカ」は確かにやばい面もたくさんありましたが、ここまでむき出しの嫌なやつばっかりが揃っていなかった。現在実生活で苦しいので(James Bluntの章参照)、もう少し明るい部分を信じたいんです…。
キタニストの割には「オールド・ボーイ」とか、どうしても受け入れられなかったりしたのも、この映画が駄目だった下地かな?
私が結構痴漢に遭ったことがあることも影響していると思います。(セクハラもだけど)
そのトラウマでいまだに男性に触られるのって異常に嫌なんで、そういうのもあるのかな?と。
しかし本当にこの映画はどうしても駄目でした…。マット・ディロンとサンドラ・ブロックの役、本当にあんな野郎と女がいたら後ろから張り飛ばしてやります(怖!)
Posted by こたえ at 2006年06月22日 01:36
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